若い人が社会に出ると、会社などで怒られる、叱られるという経験を必ずすることになります。
それに対して免疫が全くない人が一定数います。
今まで親にも怒られたことがなく、ぬくぬくと育ってきたような若者はこういう経験につまづくでしょう。
しかし、一方、ACの症状を呈している人も、怒られたときに対処できないということが生じ得ます。
では、ACの人が怒られたときに自分の中で消化できないのはなぜなのでしょうか。
どうすればこの問題に対処することができるでしょうか。
最初のステップは、自分の現状を知ることです。
今回は、その最初のステップについてだけ考えることにします。
ACはなぜ怒られると折れてしまうのか
自分はACではないかと感じているある20代の男性は、自分の父親からモラハラと思われる接し方に悩まされてきました。
父親は、いつも自分の思い通りに行かないと、怒鳴ったり、けんか腰になって迫ってきたり、逆に無口になったりしてきたそうです。
こういう状態が日常茶飯事である上に、母親は過干渉と言える接し方をしてきました。
きっと心の休まる暇などなかったことだと思います。
この男性は、そんな父親が嫌いで、父親のせいでACになってしまったと分析をしておられます。
自分の親が毒親であることを認識しているのです。
でも、親が毒親であることがわかっているからと言って、ACにならずに済むというわけにはいきません。
子供の頃から、然るべき愛情を受けられず、そのままの自分を受け入れてくれるという経験がないからです。
過干渉の母親もそれに拍車をかけたのでしょう。
「それダメ」「あれダメ」「あなたのために思って言っている」といったやり取りがなされてきたものと思われます。
それでは、自分に自身を持ったり、自分には価値があるという思いは成長しないでしょう。
こういう子供時代を過ごしていると、白か黒かという思考に支配されて、注意されるとそれが小さなことであっても自分は嫌われている、自分はダメだと思ってしまう、と考える癖がついてしまうことが多いです。
また、誰からも認められることなんてないんだという過度の一般化をしてみたりするかもしれません。
子供の頃から認められたことがないわけですから、こういった考えに陥ってしまうのも無理はありません。
先に上げた20代の男性も、一度仕事で怒られたときに立ち直ることができずに会社をやめてしまったという経験をしておられます。
ここまでは、みなさんもすでにご理解いただいている範囲の内容かもしれません。
では、それをどうやって克服、解決していけばいいのでしょうか。
そのためには、まず、自分を責めてしまうのはなぜなのか、その構図を知る必要があります。
ACが自分を責めてしまうのはなぜ?
先ほどの太字の部分、考え方のクセとして上げてみましたが、それが自分の考え方のクセであることに気づく必要があるでしょう。
親に認められるということがもう期待できない限り、今度は、自分で自分を認める、ということに注力する必要があります。
自分で自分を責めるというパターンから、自分をゆったりと認めてあげるというわけです。
そのためには、一つできることは、次の方法を試してみることができるかもしれません。
一枚の紙を用意します。
縦長に紙を置いて、そこに、2つの大きな丸を上下に書きますが、一部分が重なるように書いてみてください。
そして、上の丸の左半分に、「こうあるべき自分」を10個挙げて書いていきます。
次に、残った右半分には、「こうでいたい自分」を同じように10個挙げて書いてみます。
どうでしょうか。
右側はなかなか書きづらいのではないでしょうか。
しかも、よく分析してみると、「こうでいたい」というより、「こうであるべき」に入りそうな内容が多くありませんか?
実は、「こうでいたい自分」の方には、「楽しい」「面白い」「楽だ」という内容のことを書いてほしかったのです。
ACの方はなかなかかけないのではないでしょうか?
次に、「こうあるべき自分」「こうでいたい自分」の中で、現状そうできているものを、丸が重なったところへ矢印で引っ張ってみてください。
多分、数個しか入らないのではないでしょうか。
さて、この作業の種明かしをしていきましょう。
上側の丸は、「理想の自分」を表しています。
「こうあるべき」「こうでいたい」を書いたのですから、そうですよね。
そして、下側の丸は、「現実の自分」を表します。
そして、重なったところへ矢印で引っ張った数が少なければ少ないほど、「理想の自分」が「現実の自分」を見下ろして、責めている強さが強くなることを示します。
私たちは、どうしても「理想の自分」のところに立ってしまいますので、「現実の自分」とのギャップを許せないんですね。
つまり、言い換えれば、「ありのままの自分」を出せていない、そして愛せていないということを意味します。
しかし、ACの方は、「ありのままの自分を出すのが怖い」という感情も同時に持っています。
でも、出せない。
では、ありのままの自分でいられるようにするにはどうすればよいか。
それは、徐々に、入念な準備をしつつ、計画的に出していくということです。
そうすることにより、徐々に、自分というものを出しても大丈夫なんだという成功体験を増やしていくことで、自分を認めるということができるようになります。
どのように計画的に出していくのかは、一人で行っていくのは難しいことでしょう。
そこで、カウンセラーの登場です。
二人で知恵を出し合って、入念な準備をし、スモールステップを踏んで、少しずつ階段を上がるようにして、ありのままの自分でいられるようにしていくのです。
ここでは、どうして自分を認められないのか、に重きをおいた内容になりましたが、上の紙に丸を書いて… という作業を是非なさってみてください。
それが、今の自分を知る大切な手段なのですから。
終わりに
上の作業を行うことにより、今の自分の限界が見えてしまうことになります。
しかし、そこで落ち込まないでください。
それからできることはたくさんあります。
一度にたくさんのことはできないので、ここではご自身の現状を知ることだけご紹介しました。
ぜひ行なってみてくださいね。
自分の意外な一面が発見できると思いますよ。
そうすると、なぜ自分は折れやすいのか、理解が深まるだけでも大きな前進になるに違いありません。